■ 今堀恒雄・吉田達也(ついでに沼田順)が "DOTS"を語る。2008.2.16

吉田達也・今堀恒雄『DOTS』に関して、doubtmusic沼田を交えてインタビューのような、鼎談のようなものを実施しました。前回『テリトリー』の時は、松山晋也さんのテキストによるインタビュー/レビューがタワーレコードのフリーペーパー「イントキシケート」に掲載され好評でしたが、今回は内輪でやってしまおうと。したがって内輪ウケの話が多く出てきますし、ハッキリ言って『DOTS』当事者による販促アジテーションなのでもあります。なんせ、『DOTS』を聴いていただかなければこの鼎談は面白くも何ともありません。もしかして聴かれた方にとっても面白くも何ともないかもしれません。注意深く言っておきますが、以下のテキストは『DOTS』の解答でもなんでもありません。解答は聴かれた方各々に出していただくのが我々の望みであります。

2008年2月12日(火)新宿・椿屋珈琲にて。

沼田  『テリトリー』(dmf-112/好評発売中)と比べると相当エディットとかオーバーダブしてるじゃない。濃すぎるよね。これ締め切り決めなきゃ、もっと濃くなってたんじゃない?
今堀  そうでもないんじゃない?
吉田  時間があればあるで先送りだよ。締め切り間近になってやる(笑)。
今堀  締め切りを待つ。
沼田  今回はライブ音源も素材にしたじゃない【注1】。
吉田  それが大きいよね。
今堀  ほとんどそれがメインだね。
沼田  それとスタジオで録った素材に重ねてったから濃くなることはおおよそ予測ができたんだけど、これほどまでになるとは思いませんでしたよ、オレは。
今堀  『テリトリー』はいわば初顔合わせのようなもんだったからインプロそのままもOKだったんだけど、2枚目に関しては(エディットやオーバーダブが)まぁ自然の成り行きというか。
沼田  エディットやオーバーダブに関して言えば、今堀くんはウンベルティポで同じようなプロセスで曲を作って吉田さんは今灰野(敬二)さんと一緒にやったりしてるじゃない。
吉田  ハードディスクの録音や編集がとてもやり易くなってきて、ちょうど自分の興味ともリンクしたから色々やってみてるんだけどね。
今堀  オレはね、その興味のピークってのがちょっと前にあって『ジャジューシュカ』(ウンベルティポ/Out One Disc/2004年)とかもうちょっと前。で、作り方の違いってのがあって、オレはフレーズをループさせるやり方をしないというのがひとつと、意図するリズムが先にあってその為にエディットするというのがもうひとつ。で、今回は(インプロ素 材が先にあるので)どうしようかなと最初迷ってたんだけど途中で徐々に見えてきた感じ。
沼田  当初今堀くんはお互いの音をエディットし合うようなことも言ってたけど最終的にぐちゃぐちゃになって(笑)。


沼田  客観的に聴いてるとお互いの音の性格がある。吉田さんのは強引でおおらか。今堀くんのは綿密で繊細。
今堀  『テリトリー』の時も感じたけど、吉田さんは一緒に演るととても繊細だなと思った。しかも出てくる音は明るくて楽しげ。
吉田  前回も思ったんだけど、今堀くんからファイルが送られて来るとき小節ごとにマーカーがついてたりして【注2】、こりゃすげーなと思ってたんだけど今回のは比較的大雑把で(笑)、だんだんとお互い歩み寄ってきてる感じじゃない?(笑)
沼田  あまり歩み寄られてもオレとしては面白くないんだけど(笑)。
今堀  制作過程の話だから(笑)。モノ買うとさ、取説をまず読む人と、読まないでいじり始める人がいる。
吉田  あー、オレいじり始めちゃって分かんなくなったら取説見る。
今堀  そうでしょ。オレは始める前に取説を隅から隅まで全部読んで全部出来るようにしてから、あとは余計なこと考えずに好きにやるの(笑)。
沼田  そういう性格的な部分も音に反映されるのかね?


沼田  もう一人、例えばベーシストを呼んで作った方がいいのかな?
吉田  いや、これはライブバンドじゃなくて、あくまで作品主体のプロジェクトと考えているので、二人きりでやった方がいい。
沼田  ライブで再現する時はナスノミツルを呼ぶ、と(笑)。
今堀  これをライブで演ったら、やることが多すぎるからね(笑)。ライブのこと考えずに作ってるから。


沼田  吉田さん、この作業【注3】楽しくてしょーがないですか?
吉田  はははは。いや、苦しいよ。出来る過程は楽しいけど作業自体は苦しいよ(笑)。
今堀  吉田さんのファイルを待っている時が一番楽しい。
沼田  ファイル交換をする過程で相手が意外なことやってきたな、と思ったのは?
吉田・今堀  ははは。それが一番面白いよ。
沼田  それに関してはどの曲が一番印象的でしたか? こんなはずじゃなかったのに、みたいな曲。オレはねタイトル曲の「DOTS」の編集前の、骨格だけの演奏、あれでも十分に成立してるのに、かなり変化した印象がある。
吉田  骨格だけの演奏はルインズみたいだった。
沼田  最初はイントロの部分が最後にもあったんだけど途中でぶった切ったんだったよね。でも早回しをこれでもかってほど吉田さんが入れたの。
吉田  あのーオレ、ダメなんだよね。間が空いちゃうとつい入れたくなっちゃうんだよね(全員爆笑)。
今堀  オレは、あの吉田さんの、気が狂ったようなアーーーーってフェイドインのコーラスが入る「QUANTUM」。あれすげー好きだ。感激してしまった(全員爆笑)。
沼田  「SHEETS」は大人の演奏じゃないですか(全員爆笑)。美しい。
吉田  あれはね、今堀くんとオレのリズムの取り方が全く違うんだよね。
今堀  リズムの取り方よりも大人か子供の問題か(笑)。
吉田  『テリトリー』の時も...だいぶ違ってたんだよね、リズムの取り方。
今堀  あー「LANGUAGE POLLUTION」。別々のリズムの解釈で進んで行くのはとても面白い。
沼田  ウンベルティポのリズムもリスナーにとっては謎なんだよ。でも吉田さんと一緒に演ることによってウンベルティポとは違った「謎な感じ」が出てくる。
今堀  そういうふうに出来る相手と出来ない相手がいて、そういうふうにやると中には怒る人もいる。「違う、ズレた、間違ってる」とか言って。吉田さんは何やっても大丈夫だろうと。悪いけど(笑)。
吉田  今回一番驚いたのは今堀くんがドラムのワンショットにさえものすごい細かなエディットがしてあって、こんな細かいことまでやってたのか、って今堀くんから届いたファイルを見てびっくりした。
今堀  あれはね...(以下企業秘密のため省略)...。
吉田  なるほど。それはエディットの本質的な...(笑)。一発の音にかける労力がものすごい!
今堀  下準備好きだからね(笑)。
沼田  取説全部読んでるから(笑)。最も意外に大きく化けたのは「SHAPES」?
吉田  そうだね。あれがこうなるとは思わなかった。
今堀  せっかく吉田さんにドラムループ素材もらってるのにさ、「SHAPES」作り込むまで全然使ってなかったし(笑)。
吉田  最後の最後で活躍した(笑)。
沼田  「SHAPES」が大化けしたせいで、暫定で決まってた曲順を全て変えたんだよ。【注4】
吉田  ファイルが来たとき沼田くんと「これは曲順変えなきゃダメだねー」って(笑)。でも「SHAPES」は他にない感じの曲だから...
今堀  待った甲斐があったでしょ(苦笑)。


沼田  一番時間かかったのは「MOTHERS」?
今堀  ファイルのやり取りが多かったのは「MOTHERS」だろうね。
吉田  けっこう手間がかかったね。
今堀  曲が意外だったから(全員爆笑)。
吉田  やっぱ大作と言えば「原子心母」かなーと。原子心母的な大仰さで...。いや、でもね、たまたま浮かんだ曲だったんだよ。
沼田  オレ最初に20分くらいの大作を。ってリクエストしたから、あれから場面展開が3回くらいあるのかと思ったら、ワンフレーズで終わっちゃったの(笑)。でも一度か二度流し聴きするだけだと単純だなーなんてリスナーの人は思うかも知れないけど、良く聴くと実は色々な仕掛けが施されてるよね。
今堀  あのーGOK(スタジオ)で吉田さんに「この曲にコードつけて」って言われて、冗談で「じゃメジャーでいい? フュージョンみたいに」って言ったのを思い出して全部メジャーコードにしたの(笑)。


吉田  ライブ音源のギター部分をオレがエディットした素材、最初聴いたときどんな感じだった?
今堀  吉田さんの曲として成立したなという感じがしたよね。自分のフレーズなんだけど自分の手から離れた感じはした。
吉田  スタパのライブの時、今堀くんがソロを弾きまくった中から引っ張ってこようと思ってたんだけど、なかなかソロを弾かない(笑)。でも録音されたやつを後でよ〜く聴いてみると、なんだかいいフレーズが沢山出て来るんだよね。
今堀  こんなフレーズ弾いたっけ? 知らない! みたいなのがあった(笑)。
吉田・沼田  あー、例のあのフレーズ。
全員  わはははは。
今堀  リフでもう吉田さんが組んじゃってる(エディットしちゃってる)フレーズもあったでしょ。ありえないポジションの飛び方とか、してる。32分音符で20フレット飛ぶ、みたいな(笑)。
吉田  あーやってるやってる。あるある。はははは。


沼田  売れてくれればいいな。
吉田  そこだよね。やっぱ、マスロックとかにする?
沼田  今堀くん、マスロックって知ってる?
今堀  知らない。
沼田  あるらしいんだよ、そういうのが。ウンベルティポとか是巨人とかもどこで売っていいかわからないだろうからオーダー数も当然少なくなる。どうするんだっちゅう話だよ。まぁどうするんだってのはオレ個人の話だけどさ。
吉田  流通も厳しいですね。
沼田  厳しいよね。どういう人が買うのかな?
吉田  ふふふ。
沼田  どこのコーナーで売っていいのか分からんじゃないか、こんな濃いアルバム。
今堀  このアルバム、濃いけどさ、でも意外と質感はカラッとしてるんじゃないかな。
沼田  それは吉田さんのアメリカン・コーラス入ったから(全員爆笑)。【注5】
今堀  なんでかなあ?


沼田  吉田さん、まとめてよ。
吉田  社長がまとめなきゃ(笑)。
今堀  吉田さん、これ、ライブの時の楽譜。


ー終了ー


【注1】2007年4月27日@吉祥寺スターパインズカフェでの演奏。吉田達也 drums・今堀恒雄 guitar・ナスノミツル bass。打ち合わせなしの完全即興で行われた演奏をマルチで録音し、ギター部分のみを切り貼りして一部曲の素材にした。
【注2】音楽ソフト、ディジタル・パフォーマーのテクニカル・ターム。
【注3】コンピュータ上での編集、エフェクト、オーバーダブなど、引きこもり作業。
【注4】「SHAPES」が一番最後に完成した曲。プロデューサーが設定した締め切りを過ぎて今堀恒雄が最後まで引っ張った。
【注5】『テリトリー』の時から吉田達也が好んで使用するヴォイス・コーラスのオーバーダブ。自室スタジオで唄うその底抜けに明るいコーラスには鬼気迫るものがある。

http://www.doubtmusic.com/dmf-120.html




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